muroyanの日記

ピアニスト、作曲・編曲家、むろやんのブログ

5つの展覧会

東京都現代美術館の看板

 博物館や美術館を回っていろいろ展覧会を見てきた。以下、見てきた順。(東京都美術館でバーク・コレクション展も見たが、これは以前にブログに感想を書いたので割愛。)
(1)企画展「石綿<アスベスト>展」(国立科学博物館)
(2)常設展示 印象派と20世紀の美術(ブリヂストン美術館)
(3)転換期の作法 ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術(東京都現代美術館)
(4)MOTアニュアル2006 No Border「日本画」から/「日本画」へ(東京都現代美術館)
(5)MOTコレクション あなたのいるところ/コラージュの世界(東京都現代美術館)
●企画展「石綿<アスベスト>展」
 健康被害によって有名(?)になった悪役鉱物アスベストの展示。常設展寺内に置かれ、小規模な展示である。
 あくまでも中立的にアスベストを展示している。今ではすっかり使用禁止になってしまったが、かつてはなくてはならない鉱物だったようだ。
●常設展示 印象派と20世紀の美術
 レンブラントに始まって20世紀の現代美術まで幅広く展示。知らない作家の作品も結構あったけど、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、コロー、ピカソ、ブラック、ルソー、モディリアーニなど好まれそうな作品がいっぱいあった。(贋作はないよね・・・?)
 日本人の洋画もあったのだが、一点、藤島武二だったか「黒扇」という作品があり、これは切手になったものなので非常に印象深かった。この美術館所有だったのね。
 印象派の作品は、評価が定まっているだけあって安心して見られるし、なにより「美術鑑賞している」気分に浸れる。
 ほかにも古代エジプト美術や古代ギリシャの壺などなんでもありだった。
●転換期の作法 ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの現代美術
 社会主義の崩壊によって激動の時代を迎えた東欧の現代美術。油彩など伝統的な手法による作品はほとんどなく、写真、映像作品、オブジェなど多彩な展示。
 映像作品は結構多かったのだが、一つの上映時間が10分を超えるものも多く、すべての映像作品の映像を全部見ると3時間40分以上もかかるのだそうだ。(ちょっとそこまで付き合ってられない・・・。)一つ、ジミェフスキによる「歌のレッスンI」というビデオ作品で、これは聾唖の学生たちに歌の歌い方を教え、彼らが合唱する姿を描いた作品、これには自分のことも思い出されて涙が出てきてしまった。「アート」に対しての感動とはちょっと違うと思うが・・・。
 携帯電話をかける、マウスを操作する、といった動作を、本来の目的・成果から切り離し訓練する道具(作品)があり、携帯のボタンが非常に重く押しづらかったり、マウスを動かすのに過剰な力が必要だったり、新しい発見があった。
 ネーメトの「27メートル」という作品は、ある通り(ストリート)の長さを表し、床に3色3本の「通り」が引かれ、ヘッドフォンから流れる、通りにまつわる作者の思い出や目に映るもののモノローグを聞きながら「鑑賞」(歩く)作品。面白い。この巨大な作品は、吹き抜けの2階から見下ろせるようになっていて、美術館側の見せ方も心得ている。
●MOTアニュアル2006 No Border「日本画」から/「日本画」へ
 7人の若手(だと思うんだけど)日本人作家による、「現代の日本画」の現状。出品作家は、松井冬子、篠塚聖哉(せいや)、町田久美、長沢明、吉田有紀、三瀬夏之介、天明屋尚(てんみょうやひさし)。(metroさんの知ってる人はいますかね?)
 もちろん従来の「日本画」(花鳥風月であるとか)のイメージとはかけ離れた印象の作品のオンパレード。それぞれの作家がそれぞれの「日本画」観を自分なりに咀嚼している様子が興味深かった。
 印象に残る作品は、松井作品の「ただちに穏やかになって眠りにおち」は鎖に繋がれ頭の一部しか見えない象が水に沈む様を描いたもの。天明屋作品「現代日本若衆絵図 パラパラ(大日本帝国)対ブレイクダンス(亜米利加)」は二つの対照的なダンスが描かれる。パラパラの描き方がかわいくて印象に残った。
●MOTコレクション あなたのいるところ/コラージュの世界
 展示替えがあった常設展示。楽しみにしていた、14:00から始まるボランティアと回るギャラリー・トークで解説してもらいながら鑑賞。前回とは違って、今回は中年の上品なおばさんボランティアだった。今日は僕とあと一人しか参加者がいなかった。
 これまでは常設展は時系列に従って作品展示していたのを、テーマ(コラージュ)別展示にしたとのこと。
 サム・フランシスの作品がなくなっていたのは残念だったが、リキテンスタインや草間弥生、横尾忠則、ホックニーなど著名な作家の作品も展示されていた。
 ただ作品に向き合って鑑賞するのもいいが、やはり「解説」がついているとなにより「安心」できる。自分は「アート」を「鑑賞」してるんだ、みたいな。
 今回の常設展は3/26までだというので、また特別展に合わせて来館してみたい。
 東京都現代美術館は本当にバブリーな美術館で、贅沢な空間を使っている。ただ一作品のためだけに一室があったりするのだ。この「美術館」自体がアートのような空間みたいだ。
 数々の現代美術を見て感じたのは、「赦されている」ということ。現代美術、というか現代の芸術は何をしても許容される、その懐の深さがなんともいえない安堵感を自分にもたらしてくれた。なにかこう音楽の創作意欲に繋がる気がした。
●国立科学博物館のサイト・・・http://www.kahaku.go.jp/
●ブリヂストン美術館のサイト・・・http://www.bridgestone-museum.gr.jp/
●東京都現代美術館のサイト・・・http://www.mot-art-museum.jp/