muroyanの日記

ピアニスト、作曲・編曲家、むろやんのブログ

ジャングルベル・シアター公演「CALL ME」

劇場に届けられた花

 新井薬師前のウエストエンドスタジオにて、ジャングルベル・シアター10周年記念公演「CALL ME」公演三日目のマチネを観た。(作・演出・出演 浅野泰徳)
 この劇団のお芝居は、2004/11/26に以前も観ていて(「リヒテンゲールからの招待状」・・・ブログにも感想を記載)、大変いい印象を持っていたので、今日も大きな期待を胸に劇場に足を運んだ。そして、今回も期待を裏切らない、むしろそれを上回る大変上質なお芝居を見せてくれた。
 ストーリーは、東京でブルースハープのミュージシャンになることを夢見ていた男が、夢破れて故郷の工場社長をしている、そんなほろ苦い物語。
 オープニング、夕暮れオレンジの照明の中、つなぎの前をはだけた社長(浅野泰徳)が、暑そうに息を切らしている。そして最初の一声、「寒っ」。
 この意表をつく演出(思わず笑ってしまった)に一気に芝居に引き込まれ、ラストまで圧倒されっぱなしだった。
 芝居は、前半が笑い、ギャグの連続で客席を沸かせ、後半は幽霊の女性が出てきて(実際に幽霊であるとわかるのは終盤になってから)おとぎ話のような、考えさせられる展開。脚本の隅々まで作者の心憎い演出が仕組まれ、細部まで丁寧に丁寧に作られている。セリフの一つ一つ、シーンのひとこまひとこまがきらきらと輝いているようだ。上質なお芝居は本当にどこを切っても一流なのだと感じさせられた。浅野さんのセンスの良さは抜群だった。観客の笑いのツボを心得ている。
 一つだけ気づいた点としては、登場人物の一人一人、キャラクターがよく立っていていいのだが、人物造形がややマンガチックに感じられてしまった。(演技がわりと大げさなので。)お芝居だからかなりお芝居チックに演じてもいいのだが気づいた点。演技自体はアンサンブルもよくまとまっていた。
 ボブ・ディランの音楽が作品を貫くテーマになっている。浅野さんがブルースハープを吹くシーンも何度かあったが、いい演奏をしていた。ラストシーンはボブ・ディランのブルースハープから始まるナンバーで締めくくられた。(浅野さんが楽器を吹くところで暗転して音楽が流れる。)後味のよい終わり方であった。
 公演は27日まで。千秋楽まで頑張ってください!
●ジャングルベル・シアターのサイト・・・http://www.junglebell.com