muroyanの日記

ピアニスト、作曲・編曲家、むろやんのブログ

5つの展覧会

バーク・コレクション展の看板

 1/26のことになるが、上野と両国の美術館、博物館を回っていろいろ展覧会を見てきた。以下、見てきた順。(東京国立博物館で「書の至宝」も見たが、これは先日のブログで感想を書いたので割愛。)
(1)日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展 縄文から琳派、若冲、蕭白まで(東京都美術館)
(2)SOS-WORLD HERITAGE 写真・映像展 世界遺産からのSOS -アジア危機遺産からのメッセージ-(東京芸術大学大学美術館)
(3)退任記念 伊藤隆道展(東京芸術大学大学美術館)
(4)大河ドラマ「功名が辻」特別展「山内一豊とその妻」(江戸東京博物館)
(5)夢 大からくり展 -田中久重と江戸時代の職人の科学技術-(江戸東京博物館)
●日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展 縄文から琳派、若冲、蕭白まで(東京都美術館)
 ニューヨーク在住のメアリーバーク夫人による、日本美術収集品のコレクション。縄文時代の土器から始まって、江戸時代の美術品まで及ぶ。
 わび・さびの境地みたいな仏像(平安時代のものなど、なのでわびさびとは違うかも)・・・枯淡の味わいみたいな文物がいっぱい並んでいた。伊藤若冲の「月下白梅図」が華やかでよかった。
●SOS-WORLD HERITAGE 写真・映像展 世界遺産からのSOS -アジア危機遺産からのメッセージ-(東京芸術大学大学美術館)
 タリバン政権下で破壊された仏像など、危機に陥っている文化遺産を紹介する写真、映像展。会場入口には破壊された壁画の現物が並べられていた。(無惨な姿。)
 主に中東や東南アジアの世界遺産・危機遺産が紹介され、観光化によって新たに危機を迎えているアンコールワットや荒廃が進むフィリピンの棚田などの写真が展示されていた。
 映像は3部に分かれ、全部見てると25分にもなってしまうので、ちらっと見ただけ・・・。
●退任記念 伊藤隆道展(東京芸術大学大学美術館)
 この日見た展覧会の中で一番よかった。伊藤隆道先生(別に師事したわけではないが、芸大の先生なので)は、1939年生まれ、芸大卒業後、大阪万博、沖縄海洋博、つくば科学博などに参加、幅広く活躍、受賞も多数。1993年から芸大美術学部デザイン科教授という方である。
 最初会場に入ったら、かなり広い展示会場の中で僕しかお客がいなくて「え?」とか思ったけど・・・。
 「らせん」がモチーフの作品が多く、まだ年が明けて一月というのに、2006年制作の作品まであった。
 で、金属のらせんを回転させる作品が多くあり、2006年制作の「UpDown」という作品では、細長い金属らせんが何本も配置され、それが回転すると、らせん自体が天に向かって上昇したり、地面に吸い込まれるように下降したりするように見える。まことに不思議な感覚、光景である。
 また、「光る曲線」(1992)では、太いS字上の金属らせんが横に配置され、回転すると、角度によってS字に見えたり、一直線になったりして非常に心惑わせる発見があった。
 現代の美術に触れたのは久しぶりだが、いい展覧会だったと思う。これは入場無料なので、ぜひいろんな人に見てもらいたい。(2/5まで。)
●大河ドラマ「功名が辻」特別展「山内一豊とその妻」(江戸東京博物館)
 現在放映中のNHK大河ドラマ「功名が辻」とのタイアップ展覧会。「山内一豊とその妻」と謳いながら、半分以上はそのほかの人物を取り上げていた。山内一豊だけではもたなかったというところか。
 山内一豊は、手持ちのPC百科事典によれば・・・
山内一豊 1545か1546‐1605
やまうちかずとよ
安土桃山時代の武将。土佐藩主山内家の祖。通称猪右衛門(いえもん)。織田信長,豊臣秀吉に仕え,戦功多く遠江(とおとうみ)掛川城主となる。関ヶ原の戦に徳川方につき土佐20万余石を与えられ高知城主となる。その妻が夫の立身のために名馬を買う話は,古来妻の内助の功として有名。
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という人だそうで、記述にもある「妻が夫のために名馬を買う話」は展示の中でも盛んに喧伝されていた。いわく、嫁ぐときに父から渡された、「夫の一大事のために使いなさい」という十両を差し出したというエピソードである。半ば伝説化されていて、実話かどうかはわからないそうだが・・・。
 ほかにも、戦国時代に生きた悲劇の女性たちを特集したりしていた。7、8人くらい紹介してあっただろうか、豊臣秀吉の娘やら織田信長の妹やら、春日局など・・・。
 展示は、肖像画や書状、兜、鎧、刀、道具箱など。山内一豊所用の南蛮帽子が面白かった。
●夢 大からくり展 -田中久重と江戸時代の職人の科学技術-(江戸東京博物館)
 江戸東京博物館の常設展示の中に会場が作られ、隣接する二つのスペースでいろいろなからくり人形の解説、実演がされていた。
 一つめの会場では、お茶運びからくり人形と、矢を射るからくり人形「弓曳き童子」の解説と実演。解説者はからくり人形の修理だか製作だかを行っているらしいおじさんである。
 ひとしきりからくりの説明があったあと、お茶運びからくり人形の実演となる。会場から一人お客さんを募って、お茶を受け取ってほしいというのだが、誰もなり手がいない。いいブログのネタになるので僕が立候補しておけばよかった。今日は湯飲み茶碗(もちろん人形が持つのでごくごく小さいサイズのもの)にお茶を入れず、代わりにからくり人形の特製ストラップを入れ、それを実演に立ち会ったお客さんにプレゼントしてくれたのだ。
 説明によれば、からくり人形の製作はすごく大変らしい。一体の人形を作るのに年単位で時間がかかるそうだ。
 矢を射るからくり人形は、ちゃんと矢を手に持つ動作から始まり、弓を引き、矢を放つまでがからくりで再現されている。非常に凝った内容。矢はイヌワシの羽などが使われ、小さいながらもしっかりと本格的に作られている。
 的もちゃんと用意され、今日は4本放ったうち1本が命中していた。人形の面が工夫され、的に命中したときは表情がうれしそうに、外れたときは悲しそうに見えるようになっているらしい。(細かい!)
 二つめの会場では、バク転するからくり人形と、文字書き人形の解説と実演。解説は日本からくり協会(みたいな名称)の理事長のおじさん。何気にトーク中にジョークが交じって笑いを誘っていた。(「人形にコレステロールがたまって動きがぎこちない」とか。)
 バク転する人形は、何体かあり、それぞれ実演してくれたのだが、製作から150年くらいたっているものもあり、動きはぎこちなかった。人形の中に水銀が仕込まれていて、それが上下に移動することによって、人形がバク転する仕掛けである。
 文字書き人形は素晴らしかった。ちゃんと人形が筆に墨汁を含ませるところからスタートするのである。で、「寿」という字をすらすらと書いていく。そして、対面で見ている人のために、書き上げたあとに紙を反転させるのである。非常に芸が細かい。
 人形の内部も見せてくれたが、円盤が幾重にも重なり非常に複雑そうな作りであった。文字は「寿」のほか、「松、竹、梅」も書けるし、羽子板や帆掛け船などの絵も描けるそうである。文字よりは絵を描くからくりの方が簡単で、なぜかというと絵なら筆を途中で持ち上げずに描けるから、だそうである。
 文字書き人形の作者は東芝の創業者・田中久重で、150年ぶりにアメリカから里帰りした由。今日の特別協賛もTOSHIBAであった。
 こちらの解説と実演が終わったあと、お年玉抽選会があった。椅子に番号が振ってあり、解説者が抽選して当選番号を決める。椅子の数は50くらい、当選者数は8人くらいで、なんと、僕も当選した! 賞品は先ほどの文字書き人形が書いた文字の紙や、絵はがきや本などで、僕は江戸東京博物館のガイドブックをもらった。カラー刷りの分厚い豪華本である。この本のことは後日取り上げたい。
●東京都美術館のサイト・・・http://www.tobikan.jp/
●東京芸術大学大学美術館のサイト・・・http://www.geidai.ac.jp/museum/
●江戸東京博物館のサイト・・・http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/