muroyanの日記

ピアニスト、作曲・編曲家、むろやんのブログ

Project NAKA 第1回公演 (久保哲朗さん新作初演)

 2021年3月7日、都内、下北沢の「アレイホール」にて、「Project NAKA 第1回公演~めぐる~ Vol.4 ダリの宗教画を軸とした、音楽と絵画のプログラム」コンサート開催、お客として伺いました。月野さんとご一緒しました。

 かつて音楽への手ほどきをした、作曲家の久保哲朗くんの新作初演があるとのことで、会場へ足を運びました。アレイホールは初めて訪れるところで、マンションのワンフロアをそのままプレイングスペースにした、スタインウェイのグランドピアノもある会場でした。

 今回のコンサートは、企画構成が久保くんによるもので、コンサートの前にプレトークが15分ほどありました。久保くんと、若い美術家の吉野俊太郎氏との対談によるもので、過去の偉大な芸術家(ミケランジェロだったり、運慶だったり、作曲家のブゾーニだったり)の発言を引用もしながら、今宵のコンサートについてコンセプトを語る・・・といった趣でした。大変興味深くお話を伺いました。

 今回のコンサートは、現代音楽(20世紀の作品が多い)を中心とした意欲的なプログラムで、演出上、会場からの拍手は「冒頭と、最終作品の演奏が終わった後、のみ」でお願いされるものでした。

 さて、久保くんの新作は「ミレーの《晩鐘》の古代学的回想」のタイトルで、出演者全員のアンサンブル(ピアノ、フルート、クラリネット、チェロ、ヴァイオリン)に、作曲者自身の指揮が加わるものでした。作品タイトルは、S.ダリの作品につけられたタイトルを、そのまま引用しています。

 冒頭、ピアノとチェロの Es音(変ホ音)によるユニゾンから静かに始まっていくのですが、この、Es音がそのまま、当夜の最終演奏曲「カリヨンの夜想曲」(エネスク作曲)の基音というか支配音というか、こちらも Es音で、シームレスにつながっていく・・・そんな構成で、思わずうなってしまいました。腑に落ちるというか、久保くんの作品が、まるで大きな大きな前奏曲のように、エネスク作品がその長大な後奏・・・ あたかも Coda のようにひしひしと感じられたのです。このアイデアはさすがでしたね。よかったです。

 本日は編成を違えた8作品が演奏されましたが、1曲毎にドニやクレー、ミロやダリの作品の画像が1枚ずつ、スクリーンに投影される、そんな趣向でした。音楽と絵画の親和性を感じました。

 フルートソロの作品が2曲(武満、ベリオ)ありまして、どちらも暗譜で吹ききっていたのはすごかったです。(若い女性フルーティストさんでした。)すごいなぁ・・・。

 コンサートはプレトークも含め、1時間半ほどで終了し(休憩なし、アンコールなし)、終演後、久保くんと、久保くんのご両親もいらしていたのでご挨拶しました。久保くんとは少し話し込み、思わず「激励」などしてしまいました。(今春からは、芸大や洗足学園大学でも教鞭を執られるそうです。がんばってもらいたいです。)

 非常に刺激を受けたコンサートでした。久保くん、今後も精力的に作品を創ってください!

♪エア(武満徹)
♪「コントラスツ」より 第3楽章(バルトーク)
♪「世の終わりのための四重奏曲」より 第3曲、第5曲(メシアン)
♪「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」より 第2楽章(ラヴェル)
♪セクエンツァ I(ベリオ)
♪ミレーの《晩鐘》の古代学的回想(久保哲朗、初演)
♪ピアノ組曲第3番より カリヨンの夜想曲(エネスク)

※セットリストは当夜のコンサートの正確な曲順とは、多少異なります。

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